若い時のように爆睡できないのは?
エムール睡眠・生活研究所の所長で富山大学名誉教授の神川です。
ご高齢の方からの睡眠相談には、必ずと言ってよいほど「若い時のように爆睡できないのですがどうしたら眠れますか?」と聞かれます。たぶん爆睡は学生時代が最後くらいで、あとは病気に罹って熱が出たりすると眠り続けることがありますが、おおよそ30歳後半ぐらいからは若干睡眠の質が低下しはじめます。
そのため、昔のように「朝か夕方か勘違いするような、家族に息を確かめられるような長時間の睡眠」はできなくなっているのが、順当な睡眠のエイジングと言っても良いでしょう。
エイジングとは?
大学で教鞭をとっているときには「エイジング論」と言う講義も担当していました。そこであらためて「エイジング」って何?と、調べてみました。
当時は便利なAIは無かったので、医学書や哲学書などを紐解いてみました。
"人は誕生(受精)の瞬間から、その人生の最後の時まで、細胞組織レベルでは常に古い細胞組織は死んで常に新しいものと入れ替わっていくため、幼児、子供の段階からすでにエイジングは始まっていると考えられる”
”言い換えれば、人は生まれてから生涯をかけて、エイジングとともに成長・発達・進化していくとも考えられる”
本には上記のような表現があり、私は特に「最後まで進化」と言う表現に元気をもらいました。
人生を生き抜く力
将来は教員や福祉系などで人々の生活をサポートする職業に就く大学生たちには、子ども達や関わる人々の成長・発達・進化を、「人自身の発達する力」と「より良く暮らしやすい環境の創造」の視点から、学問的・技術的・実践的にサポートできる人材を育成していくことが、大学での学びのミッションですとお伝えしてきました。
若い人たちに身に付けてほしいと思う「人生を生き抜く力」は、例えばコミュニケーション力、創造力、洞察力、実践力、調整力等々で、総合的な人間力を高めて、家庭/地域/職場/国家/世界的なレベルで人々の成長・発達に携われる人材に成長してほしいと願ってきました。この願いは、現在私が所属しているエムールのビジョン「眠りで世界の人々を元気にする」とも一致しています。
生涯において増減する資質
エイジングを「老化」と訳すと、人の一生の後半を指して言うイメージですが、そうすると人生の前半が「成長」という対比になりそうで、高齢者である私としては少々納得しがたいところです。厳密にいえば、エイジングはそのままの英語で解釈し、age(年齢、齢)を重ねていくことで、体力とか健康とか失いがちなものもある一方で、知恵や経験、家族や友人、他者理解、柔軟性、人間性など、成長・発達・進化し続ける可能性を持っているという認識も必要であると考えています。
このように生涯において増減する資質(力)は様々ですが、人間は誕生の瞬間からその人生の最後の時まで、身に付けたり手放したりしながら、死に向かう一方通行の(逆戻りできない)歩みであるとも言えるので、次の世代に蓄積してきた何かの「know-how」をバトンとして繋いでいきたいと思い、人に役立ちそうな事を研究として続けています。
睡眠は正しく変化しエイジングしていく行動
超高齢社会が進展するとともに、エイジングへの関心は高くなり、翻訳書を含めて、関連書物はとても多くなり、「アンチエイジング」を謳う書籍や化粧品、運動、食べ物等に関する情報は枚挙に暇がないどころか、何を信じて良いのかすら混乱するようになってきています。
このような状況の中で意外にも「睡眠」はかなり正しく変化しエイジングしていく行動であると分かってきているので、人生の節目で正しく理解して頂きたいと願っています。
成長・発達・進化・健康維持に適切な睡眠は研究成果をもとに提示されており、例えば乳幼児では成長のためにも1日の半分以上の睡眠時間を取ってほしいですし、小学生でも9時間以上、中高生は8時間以上で心身の成長と健康が促され、成人でやっと7時間前後の睡眠が疲労を回復し健康を害するリスクが減少することが分かっています。
高齢になれば運動量やコミュニケーション量も睡眠に影響し、若い時のように9時間以上横になっていること自体が不活発性の健康を害するリスクにつながることも分かってきています。
アンチエイジングよりも順調なエイジングを
このように正しく科学的な睡眠理解が必要で、適切な睡眠時間を心掛けることが健康寿命を延ばすことに繋がります。若い時みたいに高齢者が12時間以上も爆睡したら「永遠の眠りに近づいてしまいますよ!」と冗談半分で、爆睡できないことを悩まないように申し上げています。
若さを羨むばかりではなく、見た目からアンチエイジングを目指すよりも、重ねてきた年齢を受け入れて、成長・発達・進化してきたことを自負して、若い人たちの成長・発達・進化を温かく見守り応援したいものです。高齢者の言い訳かもしれませんが、そうして人は進化を重ねてきたのだと思いますし、年輪の一層にでもなれるのであれば、とても素敵な人生だったと思えるのではないでしょうか。
順調なエイジングのために、1に睡眠、2に運動、3に食事、4に色々な世代の人とのコミュニケーションを心掛け、年齢に逆らわず、焦らず、自分にできることでまだまだ成長・発達・進化を目指していきたいものです。
ちょうど先日、伊勢丹立川店で行われたイベントで、私からすれば子ども世代、孫世代の親子と「脳とすいみんはともだちゲーム」をいっしょに楽しみました。諸先輩方や私が研究してきたことを、ボードゲームを通してお伝えしました。参加くださったお父さんやお母さんが自分自身のことも振り返りながら、お子様に読み聞かせている姿を見て、たくさんの元気をもらいました。どの世代でも生活を見直し、進化するヒントは見えると思います。順調なエイジングを重ねて、「最後まで進化」していきましょう。
睡眠と脳を育てるボードゲーム
『作って遊ぶ、睡眠と脳を育てるボードゲーム~脳とすいみんはともだち~』は、家族や友達と楽しく遊びながら日ごとの生活を振り返ることができる、睡眠教育のためのボードゲームです。睡眠習慣を整えると脳が元気になって健やかに成長し、質の高い生活ができることを知ってほしいと思っています。
はさみやのりを使って作って遊ぶ体験
SNSの年齢制限を検討するほど、近年のデジタル化の進展が凄まじい中で、子どもたちの脳が過労状態やインターネット中毒状態になることで、発達が遅れてしまうことも懸念しています。
日常生活の中で身体や手を使うことの楽しさを感じてもらいたいと思い、「作って遊ぶ」という要素を取り入れました。ゲームに使用するサイコロやコマ、シートなどをはさみやのりを使って、親子、兄弟、友達と作る喜びを実感してもらい、楽しく遊んでもらいたいと願っています。
脳の発達と五感と感情
実は人間の脳の発達は、五感の感覚や、感情を伴う実際の体験や学習を通して神経細胞の軸策が太くなり重量が増すことで促されていきます。特に皮膚と脳は密接な関係があるのは、受精卵が細胞分裂を繰り返すなかで、同じ外胚葉というところから脳と皮膚ができるからなのです。だから、皮膚に加えられる様々な刺激や感触が脳の感覚野に伝えられるのです。手や足、顔の感覚は脳の感覚野の広い領域と関わっていて、日常生活で喜怒哀楽などの感情を伴う多くの体験を通して、脳の神経伝達はさらに活性化し、脳が発達して、精神が安定することに繋がることが分かっています。
アナログなゲームが心を豊かにする
『作って遊ぶ、睡眠と脳を育てるボードゲーム~脳とすいみんはともだち~』は、手を動かし、世代を問わずみんなで喜怒哀楽を共にしながら楽しめる「すごろくゲーム」です。デジタルゲームは脳を疲れさせるばかりですが、アナログなゲームは脳を活性化し、心を安定にし、豊かにしてくれます。ご家族や友だちと遊びながら、私たちの身体や心のコントローラーである脳を健やかに育てるためには睡眠が重要な役割を果たすことを楽しく学んでいただければと思います。
おわりに
『作って遊ぶ、睡眠と脳を育てるボードゲーム~脳とすいみんはともだち~』のマス目には、次のような内容が書かれています。あなたは「つかれた脳」になりそうな生活をしていますか?それともしっかり「げんき脳」になる生活をしていますか?
みんなで日常を振り返りながら、楽しくゲームをして、健やかで豊かな毎日を送ってください。
今日から実践できる睡眠改善方法
睡眠教育を実施してみようという教育者の方、保護者の皆様、企業内の人事や健康管理を担当されている方、ぜひ下記のURLから「睡眠を改善する生活習慣15項目」に答えてみて参考にしてください。 昨年までの睡眠研究で、この15項目から3つを選んで2週間チャレンジして下さると、61%の方で睡眠が改善したという結果になりました。残りの39%に入りそうな方はもうあと2項目を加えてみて下さい。
すいみん・かるた
以前に作成した「すいみん・かるた」でも45組の絵札・読み札でも睡眠の重要性を科学的に紹介、解説させて頂いています。お子様との学びの場でぜひご活用ください。大人にとっても学びのある内容になっています。

睡眠環境と習慣を学びたい方におすすめ
【PR】睡眠環境と睡眠習慣を体系的に学びたい方、知識はあってもなかなか実践できないという方には、エムール睡眠・生活研究所(所長:神川康子)と通信教育のユーキャンが共同開発した『睡眠セルフマネジメント講座』がおすすめです。テキストで睡眠のしくみや、睡眠の質を高める実践法などの知識を身につけながら、副教材やアプリで睡眠のくせを見える化!2つの学習を進めていくことで資格取得と快眠習慣の定着、両方を目指せます。
いずれもリンクフリーです。ぜひ睡眠教育の実践にお役立ていただければと存じます。
エムール体験ショールームについて
マットレスやベッド、折りたたみベッド、高座椅子・リクライニングチェア等の製品を体験できる人体系家具のショールームです。予約制で最大45分間、専門スタッフがお客様の心地よい体験をサポートしてくれます。私も購入を検討している折りたたみベッドは驚くほど快適で「これなら毎日畳める!」と感動しました。空間でお悩みの方はぜひ一度体験してみてください。
