ソーシャルジェットラグとは
エムール睡眠・生活研究所の所長で富山大学名誉教授の神川です。
「ソーシャルジェットラグ」という言葉は、睡眠の研究している私たちにとっては、今やなじみの深い言葉になっているのですが、一般の方向けの講演などで紹介をすると、まだまだ理解は広がっていないように感じます。
ソーシャルジェットラグは日本語で「社会的時差ボケ」と紹介され、土日や夏休みなどに夜更かし朝寝坊して睡眠時間帯がズレ、社会生活時間と体内時計が乖離し(ズレ)て、体調不良などが起こる状態のことを言います。
※画像は生成AIで作成
お休み明けの不調の原因にも
もともとの「ジェットラグ」はジェット機で海外旅行をした際に生じる出発国と到着国の時刻の違いで生じる体内時計と現地時刻の乖離で、睡眠や活動の時間がズレることと説明しますが、意外に若い人ほど、また食事や活動の時刻の乖離による不具合は感じにくいようです。しかし、睡眠となると、食べる・動くよりも「うまく寝付けない、起きられない」という状況は起きがちです。
休日と平日での過ごし方のズレにより、土日明けの朝登校できない、会社に遅刻するという事態になってしまい、社会的な時間と体内時計が乖離したことによる様々な問題が生まれてしまうのです。
社会人だけでなく子ども世代でも
ソーシャルジェットラグは、現代社会に生活する私たちにとって、睡眠不足や睡眠の質低下にもつながりやすく、心身の健康を阻害する大きな課題となっています。社会人であれば、土日休み明けの月曜日に眠気が取れなかったり、食欲が落ちてしまったり、気分が落ち込んでいたりというご経験に心当たりがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
海外旅行で時差ボケを経験したことがある方は、これまでの説明でソーシャルジェットラグについてご理解いただけることが多いのですが、海外に行ったことのない子どもたちは時差ぼけの経験が無いので「なに?それ!」というように、実感が伴いにくいようです。ただ、現実には子ども世代でもゲームやタブレット利用などのスクリーンタイム増加によって、日々無意識に体験している現象なのです。
睡眠・生活リズムを指導する際のコツ
皆さんがお子様に、ソーシャルジェットラグや睡眠・生活リズムについて指導する際は、世界地図を開いて説明すると良いと思います。
小学生の場合
本来、9時位には寝た方が良いのですが、夜中の12時過ぎまで起きていると、インド(ニューデリー:時差3時間半)へ旅行するようなものです。
中高生の場合
中高生に多い、朝方まで勉強やゲーム・SNSをやっているのは、イタリアやフランス(時差8時間)まで旅をしているようなものです。
このように説明するとなるほどと分かってくれます。現地でオリンピック観戦や観光したり、美味しいものを食べたりして楽しかった思い出が残るなら、それも良いのですが、どこにも行かないのに社会的な時刻と自分の体内時計のズレによる疲れだけが残りますというと、残念な気持ちは分かるようで、それならソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)よりも、本当のジェットラグ(海外旅行の時差)の方がお得な感じ、いつか海外旅行したいと気づきます。
※画像は生成AIで作成
生体リズムの修正にはずらした日数の数倍かかる
この2月はちょうど、ミラノ・コルティナ2026オリンピックが開催されました。開会式から閉会式までの17日間、注目の種目をLIVEで観て、寝不足になったり、生活のリズムが乱れて、連休明けからの日常がつらいという方々もあったかもしれません。乱れた生体リズムの修正には、ずらした日数の数倍はかかるのですが、楽しかった体験があり、多くの感動や勇気や頑張る意欲が湧いてきたのならプラスマイナスゼロかもしれません。
そして、良い思い出や体験から得た意欲やパワーなどを継続するためには、社会的時差ぼけは速やかに修正して、寝つき、起床をスムースにして、日中の眠気がない質の良い睡眠に戻すことが必要です。ちなみに、私は1972年の札幌(時差無し)開催の冬季オリンピックでスケート部に入るきっかけを得ました。
睡眠時間だけでなく生活リズムにも注目を
昨年、大学進学率の高い高校で睡眠健康診断(デバイスで1週間睡眠計測)を行った結果、たぶん勉強時間もスクリーンタイムも多いのだろうと思いますが、高校生の9割が寝不足感や疲労感を感じ、昼間学校で居眠りをし、55%がイライラしがちで、時々悲しい気分になるという、メンタルにダメージが及ぶという結果になりました。
改めて睡眠は時間だけでなく、週末でも長めの休暇期間でも時差のある国で開催されるオリンピック期間でも、就寝、起床時刻を大幅にズレさせないよう、ずれた後は速やかに戻すことも想定に入れて、生活時間の振れ幅があったとしても戻すポイント(睡眠時間の中央値)を意識した方が、心身共に健康に暮らせることが分かってきました。
睡眠時間を増やすときは起床と就寝を均等に
最近は企業の健康経営のために講演に行くことも多いのですが、ほとんどの方が高校生のように寝不足、睡眠・生活リズムが乱れがち(交代制勤務もあり)な傾向がありました。
いきなり睡眠時間を数時間も増やすことは現実的には不可能です。しかし、「まずは今より30分増やすことから、しかも15分早く寝て、15分遅く起きるように調整してみてください」と言うと、「具体的で分かりやすい。それならできそう!」という声が返ってきます。少しずつ、「次は30分早く寝て、30分遅く起きるようにして7時間睡眠に近づけてください」と段階的に増やし、しかも増やす時間を睡眠時間帯の前後に振り分けると、睡眠時間帯の中央時刻(11時就寝で7時起床なら中央時刻は3時)がズレなくて、ソーシャルジェットラグが起こりにくいのです。睡眠の真ん中時刻をずらさないことが睡眠の質を向上することにもつながるのです。
睡眠・生活習慣を見直したい方、今よりも十分な睡眠時間を確保しようと考えている方は、「寝る時間と起きる時間それぞれ同じ時間ずつ調整する」ということを念頭に取り組まれると良いでしょう。
※画像は生成AIで作成
エムール体験ショールームについて
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