専門家に聞く"睡眠満足度最下位脱出の試み"

専門家に聞く"睡眠満足度最下位脱出の試み"

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あなたの住む地域の睡眠満足度は?

エムール睡眠・生活研究所の所長で富山大学名誉教授の神川と申します。
皆さんはご自身が住んでいらっしゃる地域のランキングをご存知でしょうか?

自分の住んでいる地域のランキングを知ることによって、生活の改善ポイントや、地域・まちづくりでどのような課題を抱え、自分が何をしたら良いかが見えてきます。

全国健康保険協会富山支部の報告によると、私が住んでいる富山県は、平成26年から10年間、睡眠満足度最下位(睡眠で十分休養が取れていない者の割合)が続いてきました。近年の研究でも睡眠で休養感を得ることは生活習慣病を予防し、健康を維持向上する上で重要であるばかりでなく、心の健康にも大きく影響を及ぼすことが分かっています。

なぜ富山県の睡眠満足度は低い?

そのような中で、なぜ富山が睡眠満足度最下位(とくに女性)であるのか、改善を図るためにはその原因を見極めることが必要であると考え、現在も分析を継続しています。

推測できる事としては
・勤勉な気質(日本人はみんなと言われそう?)
・仕事優先、睡眠軽視
・共働きが多いが夫の家事分担率が低い
・働き方改革の遅れ(中小企業が多い)
・産業構造(製造業・交代制勤務が多い)
・車通勤が多く運動不足
・変革や改革に躊躇する保守的な傾向
・気候や日照率(冬の寒さ・暗さ)の影響
等々、枚挙に暇がないほど考えられます。

睡眠満足度改善に向けた取り組み

まだ明確な原因は分かっていませんが、少しずつ改善方法は見えてきました。

①科学的な理解を深めること

まずは、睡眠の心身の健康への影響とその重要性を様々な機会を作って科学的に理解して頂くこと。教育現場には年間50件以上、講演等の機会を頂きますが、企業でお話しできる機会はまだ年間10件程度にとどまっています。働く方々の心身の健康は、生産性にも影響しますので、ぜひとも企業の皆様にも睡眠に関する科学的な理解を深めていただければと思います。

②量だけでなく質にも着目した対策を

睡眠は時間だけでなく、その質も重要なので、質の高い睡眠を確保できるように日々の生活行動や寝室環境を整えることと、体内時計を乱さないようにできるだけ毎日同じような時間帯に眠ることをお勧めしています。

③チームで取り組むこと

行政と共に取り組んで「ぐっすりキャンペーン」の結果分析で分かった意外なことが、一人で睡眠改善に取り組むよりも、学校内、企業内、友達や家族などとチームで目標を共有して取り組むことによる成果が見えたことです。睡眠改善をコミュニケーションツールにして2週間ほど取り組んでいただくと、睡眠改善、健康改善、意識改革、健康経営につながることが分かりました。

④働き方との両立

協会けんぽ富山支部の調査分析では、
・最低6時間以上は睡眠時間を確保することが重要
・労働時間が毎日9時間以上になると休養感が得にくい
・夜勤が休養感を低下させる
・余暇時間が1時間未満では休養感が得にくいこと
などが報告されています。働き方と健康的な暮らしを両立させるためには社会全体や職場での理解も求められます。

継続的な取り組みで改善率が全国1位に

富山県では、睡眠満足度が最下位であることから危機感をもって取り組みをスタートしましたが、最近、令和6年度の調査結果が報告されて、調査開始以来初めて、睡眠で休養が取れない者の割合(全体41.0%、男性38.7%、女性44.7%)は全国32位となり、その改善率(7.1ポイント改善)が全国1位であったことが判明しました。
10年間も最下位が続き、時に無力感を感じながらも地味に取り組みを続けてきたことが今となっては報われた実感と、一過性に終わらせないための取り組みを継続させるために、研究は止められないと改めて決意しているところです。

浸透し始めた睡眠の重要性

近年、ようやく睡眠を重要視する風潮が多くの研究成果によって、またトップアスリートの大谷翔平選手や、睡眠改善を謳う商品の様々な広告などによって浸透してきたと実感していますが、地域でも研究者、行政、富山では協会けんぽ富山支部との協働の成果が現れたのではないかと自負し、さらに睡眠習慣改善の切り札を探っていきたいと意気込んでいます。
ちなみに私は講演ではよく「最下位は県民一丸となって取り組む脱出のチャンス!最下位は上昇するしかない!」と締めくくらせて頂いています。
気になる富山の最下位を分かりやすく「寝ない」「動かない」「噛まない」「止まらない」の4つと紹介し、一人ひとり心掛けて最下位を脱出しましょうと言ってきました。

結果、とうとう「睡眠で休養感が得られない」は32位に向上、「信号のない横断歩道で止まる車」は22位まで改善しました。あと「噛まない」、「動かない」もひとり一人心掛けていく事で、最下位脱出となる日も近いのではないでしょうか。

睡眠休養感トップの県の暮らしとは?

皆様のお住まいの県で脱出したい最下位はどんなことでしょうか。今後何に取り組まなくてはならないのかを新年に向けて目標を見つけてみるのも良いでしょう。
ところで、睡眠休養感の調査でずっとトップを獲り続けている県があります。島根県です。島根県民の方々は、どのような暮らしを心掛けられて睡眠満足度が高いのでしょうか。ご存じの方、ぜひ教えてください。
また、島根県民の方はもちろん、皆様がお住まいの地域のことも知っていきたいと思います。できましたら、ぜひ下記のアンケートに答えて下さると嬉しいです。
全国からのご回答を待っております。

睡眠の質を改善するための生活習慣改善の取り組みアンケート

今日から実践できる睡眠改善方法

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すいみん・かるた

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すいみん・かるたの詳細

 

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いずれもリンクフリーです。ぜひ睡眠教育の実践にお役立ていただければと存じます。

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