眠りを改善する香り
エムール睡眠・生活研究所の所長で富山大学名誉教授の神川と申します。ようやく猛暑も過ぎて束の間かもしれない秋がやってきます。短期決戦になりそうですが、夏の疲れを回復する睡眠や食欲、読書、学び、スポーツ、観劇、旅行等々で、快適な時間を過ごしたいものですね。毎年、私が秋のはじめを感じるのは「金木犀」の香りです。香りは目には見えませんが、暮らしを豊かに穏やかにしてくれるアイテムです。特に睡眠相談を受けていると、眠りを改善する香りに関心を寄せる女性の方が多いように思います。そこで今日は眠りと生活をサポートする香りについて、最新の研究成果も含めてご紹介したいと思います。
香りに関する研究
9月12日-13日に日本睡眠環境学会が千葉県の流山市で開催されました。その中のシンポジウムで、東京大学の研究院の方が「よく知っている好きな匂いが不快な夢をもたらす」という意外な現象や、「よく知っている匂いを深い眠りの時に嗅がせると記憶力が向上した」などの研究成果を紹介され、人の覚醒時の匂いに対する反応と、睡眠中は全く異なるということを知りました。このような匂いや香りを日常生活にうまく取り込むことによって、覚醒時やや睡眠に有効な香りの使い方があると確信しました。
睡眠環境づくりに適している香りの種類
私も現在、行政の仕事の中で、睡眠満足度がワーストな富山県で眠りの質向上に寄与するアロマスプレーや枕カバー、ハーブティーなどのプロデュースにも関わらせてもらっています。
そのような中で注目したのが、鎮静効果があるとされるセドロール(cedrol:ヒマラヤスギなどの針葉樹から抽出される精油に含まれ、シダーウッドオイルとして市販)です。この香りを覚醒時に使用すると精神が落ち着きやすく、就寝前には穏やかな眠りに誘ってくれます。しかも匂いは人によって感じるか感じない程度なので、就寝中には眠りを妨げず、悪夢を誘発することもありません。
先に書きましたように、近年の研究ではどんなに好きな香り(例:バラの香り)でも、就寝中には悪夢を誘発することが分かってきたので、睡眠中は刺激のない香りか、認知していない(馴染みのない)香りが睡眠を妨げないと言えそうです。ちなみに睡眠中の香りは刺激的な香り(例:わさびの香り)でない限り中途覚醒は引き起こさないことが分かっています。
香りはどんなタイミングで使うと効果的?
このように見てくると香りは主に起きているときに使うことが適していると言えそうです。すっきり目覚めたり、集中力を高めるたり、心地よさを演出したり、就寝前などは心を落ち着けたり、寝つきを良くするために使うと良いようです。しかし、深い睡眠中の匂い刺激が記憶を固定したり意識を変えたり(例:禁煙の試み)する可能性については興味深く、これからの研究成果に期待したいと思います。
香りと記憶
みなさんは「プルースト現象」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。突然の強い匂いが過去の記憶を鮮明に呼び覚ます現象で、私は台所で大根を切っていると、突然幼少期に母に大根のしっぽやニンジンの端をもらってままごとをした情景がよみがえります。五感の中で嗅覚だけが大脳辺縁系の偏桃体(感情)や海馬(記憶)と直接つながっているので、感情的な記憶との結びつきが強いのです。つまり五感を刺激する自然体験や家事作業などが脳の神経回路を活性化し育つためにも重要であることが分かります。
香りの効果
最後に香りの効果についても紹介しておきましょう。香りの持つ作用に合わせて、朝と夜で使い分けると良いと思います。
朝の香り
寝起きをさわやかにする香りは、ジャスミン、ペパーミント、ローズマリー、ユーカリ、ライム、柚子、グレープフルーツなどの覚醒作用がある香り。
夜の香り
精神鎮静作用があり、心を落ち着かせたり、入眠を促すには、セドロール、ヘリオトロピン(バニラ豆、ニセアカシア、セイヨウナツユキソウの精油に含有)、ラベンダー、カモミール、スイートオレンジ、サンダルウッド、クラリセージやもちろん金木犀の香りなども。
劇的な効果があるものではありませんが、生活をサポートし、心地よく過ごすためにぜひ参考になさってください。目覚めの香り(例:グレープフルーツ)と就寝時の香り(例:秋は金木犀)を自分好みにプロデュースしてみるのも楽しいかもしれません。
今日から実践できる睡眠改善方法
睡眠教育を実施してみようという教育者の方、保護者の皆様、企業内の人事や健康管理を担当されている方、ぜひ下記のURLから「睡眠を改善する生活習慣15項目」に答えてみて参考にしてください。 昨年までの睡眠研究で、この15項目から3つを選んで2週間チャレンジして下さると、61%の方で睡眠が改善したという結果になりました。残りの39%に入りそうな方はもうあと2項目を加えてみて下さい。
すいみん・かるた
家族や職場で睡眠を改善したい方のために「すいみん・かるた」(dreams come true=良い眠りは人生の夢を実現する)を作成しました。お子様との学びの場でぜひご活用ください。大人にとっても学びのある内容になっています。
脳とすいみんはともだち
今年の8月にようやく「脳とすいみんはともだち」というボードゲームが完成しました。スマホゲームとは異なり、サイコロの目に沿って進むアナログでシンプルなボードゲームは、仲間とコミュニケーションをとりながら脳をリフレッシュし、元気にしてくれます。学校やご家庭で使ってみたいという方はお気軽にエムールまでお問い合わせください。
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いずれもリンクフリーです。ぜひ睡眠教育の実践にお役立ていただければと存じます。
エムール体験ショールームについて
マットレスやベッド、高座椅子・リクライニングチェア等の製品を体験できるインテリアショールームです。予約制で最大1時間、専門スタッフがお客様の心地よい体験をサポートしてくれます。 立川店にはトップアスリートが練習帰りに立ち寄られ、2024年にオープンした南青山店にはタレントの方もお越しになるそうです。最近では、私のいる富山県と東京都を繋ぐ北陸新幹線とコラボした椅子が体験できると、若い世代の方も訪れるきっかけになったようです。休息姿勢は年を追うごとに痛みや健康課題が大きくなっていきますので、若い世代が姿勢に注目することはとても良いことだと思います。「売らないショールーム」ということで寝る、座るの姿勢と体験を重視した運営をしていますので、皆さんも一度訪れてみてはいかがでしょうか。