専門家に聞く”生体リズムと健康”【快眠コラム】
2024年12月3日
エムール睡眠・生活研究所
私たちの生活と時間生物学
エムール睡眠・生活研究所の所長で富山大学名誉教授の神川と申します。
11月16日(土)~17日(日)に日本時間生物学会という学術大会が富山国際会議場で開催されました。日々の暮らしの中では耳慣れない「時間生物学」がどのようなことを扱う研究なのか、遠い世界のように感じていましたが、なるほど参加してみるとまさに私たちの生活に密着した研究であることが分りました。
例えば、薬をいつ服用するのが効果的で副作用が少ないか、心臓発作はどの時間帯で起こりやすいかという事も解明されてきていますし、筋力が最大限に生かせるタイミングや、精神的な集中力が最も高くなる時間帯もあります。
とかく私たちは、24時間のうちいつ寝ても起きてもご飯を食べてもそんなに大きく違わないと思いがちですが、人間の身体の機能が大小のリズムが組み合わさって働いていることを意識すると、最も受験勉強が効率よくできる時間帯や、スポーツの試合で最も力が発揮できるタイミングを知りたいと思う人は多いと思います。自分は根性でいつでも同じ力を発揮できるという人は、眠らなくても大丈夫なショートスリーパ―だと豪語する人と似ているように思います。
私たちの身体に備わっているリズム
私たちは眠りが充実しないと食べることも身体を動かすことも、人とうまくコミュニケーションをとることも十分にできなくなります。これは、一人ひとりの身体には多くのリズムが備わっており、まるで緻密な歯車がいくつも噛み合って動く精緻な時計のように、健康を維持しながら日々の生活を繰り返していくことが出来るからです。イメージしにくいという方は、運動する際に心臓と呼吸のリズムが合わないことを想像してみてください。考えるだけでも不都合が生じることは推測できます。
目に見えないホルモンや神経伝達物質にもちゃんとリズムがあり、睡眠リズムに合わせて分泌されるものも多く確認されています。眠るという行為は、いつどのようにとるか、ある程度自分自身でコントロールできるものですが、本来は私たちの身体に備わったリズムの一部として行われるのが自然とも言えそうです。
歯車の噛み合わない、壊れたからくり人形のようになってしまわないように、毎日の暮らしで守りたいリズムをベースにして、私たちは遊んだり勉強したり、人と交流したり、美味しいものを楽しんだりすると、心身にも最大限の良い効果が生まれることになります。
リズムの種類
私達を元気に動かすリズムとしては、1秒以下のリズムに瞬きや脳波などがあり、心拍は1秒、呼吸は4秒、腸の動きは30秒、睡眠・覚醒リズムは1日、神経の再生は20~40日のリズムがあるようです。血小板は10日の寿命、赤血球は120日の寿命と思うと、身体のあちこちで再生産がおこなわれている訳で、私達も自分や自分の大切な人たちの生命の営みに最大限の効果を発揮したいと考えるのは当然だろうと思います。
人の命は永遠ではないけど、次の世代に命のリズムを繋いでいけば、賢い人類だとするなら命を永遠に繋ぐことも可能なはずですし、そのための科学や研究でなければならないと考えます。
2017年のノーベル生理学・医学賞はジェフリー・C・ホール、マイケル・ロスバッシュ、マイケル・W・ヤングの3人に贈られました。受賞理由は、生き物の体内時計を生み出す遺伝子とたんぱく質による機構を発見し体内時計のしくみを発見したことだったのです。
私たちの毎日も一生も、後戻りすることのできない時間との関りが大きいので、乱れがちな自らの体内時計を意識しながら、修理しながら100年以上チックタック時を刻み、できる限り健康に楽しく時を過ごせたら良いのにと考えてしまいました。
星にもバクテリアにもリズムがある
宇宙の星にも生命誕生と消滅のリズムがあります。また、地球上にはたくさんの動物、植物が存在していますが、すべてのバクテリアやウイルスに至るまで、成長、増殖のリズムを持っているのです。自分たちのリズムを知り、他者のリズムを理解し、より生命力を発揮して生活して行くための「時間生物学」に多いに興味関心を持ちました。
また、これまで特にあまり深く考えて来なかった「時間栄養学」という言葉に衝撃を受けました。いつ何を食べるのかも人体の機能を最大限に発揮する手がかりとなります。いつ寝るのが健康維持、そして健康寿命延伸に効果的かということと同じですね。
今回は「時間生物学」の中から、生体リズムに関するお話を取り上げました。いかがでしたでしょうか。
夜、静かな寝室で目をつぶってみると、心臓の鼓動が聴こえます。目には見えませんが、私たちの身体の中にたしかにリズムを刻む時計があることを実感できます。生命を維持し、健康に過ごすために今日も私たちはリズムを刻んでいます。この自然なリズムを時に人工環境で阻害する事が、人間が睡眠で悩むようになった要因の一つかもしれません。もうすぐ1年が終わりますので、ご自身の生活リズムが自然なリズムになっているか、安定しているか点検してみてはいかがでしょうか。
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