専門家に聞く”猛暑の疲れを睡眠で回復するには?”【快眠コラム】

2024年8月28日

神川 康子

夏の疲れ、溜まっていませんか?

エムール睡眠・生活研究所の所長で富山大学名誉教授の神川と申します。

今年の8月は、例年に引き続き猛暑とゲリラ豪雨、さらに南海トラフ地震への備えに加えて、台風も巨大化し、「命の危険」に配慮しなければならない日が増えてきているように感じます。また、猛暑の日が増えるのと反対に、心地よいと感じられる春の宵や、秋の夜長を楽しめる日数も減ってしまっているのではないかと思います。そろそろ各人各様の夏の疲れも溜まってきて、なんとか心身の状態を正常にリセットしたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。

夏の出来事の一例

  • 夏休みのレジャー海外旅行
  • オリンピックなどの時差あり観戦
  • お仕事
  • 宿題や課題
  • 寝苦しい熱帯夜続き
  • コロナウィルスやマイコプラズマ肺炎などの感染症や疾病
  • 給食なしで昼食作りなどの家族の世話
  • 帰省
  • 交通機関の乱れ

生体リズムを整える必要性

体調を整えるために、まず見直したいのが生体リズム(体内時計)です。
例えば、起きる時刻は仕事や学校などに出かけたり、自宅で作業をスタートさせたりする時刻を決めて、毎日大きくズレさせない方が良いことが分っています。

起きる時刻を一定にしたら、寝る時刻の一定化にもチャレンジしてみましょう。お仕事柄、寝起きする時刻を安定させづらいのが交代制勤務の方々です。交代制勤務者の生体リズム調整の攻略方法は、かなり研究が進んではいるものの、なかなかこれといって身体を楽にする決め手が無いのが現状で、皆さんお仕事も大変なところ、睡眠に関してもとてもご苦労されています。これは、仕事などで拘束されてもいないのに寝起きする時刻(睡眠時間帯)をずらすことのリスクを物語っているとも言えます。

乱れた体内時計を取り戻すには?

土日に夜更かししたり、午前中ずっと寝ていたりすると生体リズムを司る体内時計(脳の視交叉上核にあります)は、たった1日でも簡単に30分以上遅れますが、もとに戻そうとしても、毎日20分ずつ早寝を心がけても、1週間で5分ほどしか戻りません。

夏の間に夜更かしになったり、寝苦しくて夜中に何度も起き、朝が起きられず、お昼近くまでゴロゴロしていたという、体内時計が乱れてしまった方は、これから10日から2週間ほどかけて、就寝時刻をできれば日を跨がないようにして、毎日7時間前後は眠れるようにしましょう。きっと夏の蓄積疲労とストレスが早めにとれて、心地よい秋風が感じられるようになる事でしょう。脳と身体の疲労が回復すると、これからやって来る自然災害時などにおいても命を守るための的確な判断や行動もとりやすくなることと思います。

実際に試してみました

睡眠研究をしている私自身も、8月は猛暑と災害不安、仕事のプレッシャーで十分な睡眠がとれない日々が続きました。だからこそ自らを実験台にどんな工夫をしたら睡眠が充実するか色々と試し続けてきました。

高齢者の私が中途覚醒なく朝までぐっすり眠れた日の条件は下記の通りです。

  • エアコンを26℃設定で起床までつけていた日
  • 前日に8000歩以上歩いた日
  • 入浴時にホットタオルで首を暖めた日
  • 寝具を干してシーツや掛布団カバーを取り換えた日
  • 枕カバーにシダーウッドオイルをスプレーした日
  • 悩み事やストレスが少なかった日

ものすごく忙しくて疲れすぎた日は寝不足続きでも眠れませんでした。やはり物事には「適度」がありそうです。

その他、寝具のメンテナンスも重要です。10年以上前にNHKの「アインシュタインの眼」という科学情報番組で、布団を干す場合と1か月干さない場合で、睡眠の質を比較する実験を請け負ったことがありましたが、見事に乾燥したふかふかの布団では、深い眠りの割合が増えました。眠りにこそ心地よさは大切ですね。

今日から実践できる睡眠改善方法

夏の疲れをリセットしたいという方は、ぜひ下記のURLから「睡眠を改善する生活習慣15項目」に答えてみて参考にしてください。
昨年までの睡眠研究で、この15項目から3つを選んで2週間チャレンジして下さると、61%の方で睡眠が改善したという結果になりました。残りの39%に入りそうな方はもうあと2項目を加えてみて下さい。
夏の疲れを秋に持ち越さないよう、日々の睡眠を大切にしていってください。

 

睡眠の質を改善するための生活習慣改善の取り組みアンケート

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執筆者/監修
Author

神川 康子

富山大学 名誉教授 博士(学術) 。一般社団法人日本睡眠改善協議会理事。日本眠育協議会理事。富山県公安委員会委員。富山県社会福祉協議会理事。40年以上に渡り、睡眠研究を行う。年間50回を超える講演を通して、睡眠教育の啓発に尽力。睡眠環境学入門ほか寄稿多数。