【快眠コラム】美容と睡眠
2024年5月27日
神川 康子
目次
美しい肌は、寝ている間につくられる
エムール睡眠・生活研究所の所長で富山大学名誉教授の神川と申します。睡眠に関するセミナーや講座のご依頼をいただく中で、しばしば「美容と睡眠」について関心いただきます。昨今の睡眠研究により「美しい肌は寝ている間につくられる」ことが分っているので、よく講演では「眠れる夜の美女」と言ったりしています。
また、睡眠の充実は、私たちの心と身体の健康に大きな影響を及ぼし、人の一生の成長や老化にも関わる「生涯、命の総合メンテナンスをつかさどる」とも言わせて頂いています。
近年では、老若男女幅広く関心の高い「美容」にも睡眠が大きな影響を及ぼすことが明らかになっていますので、今回のコラムでは睡眠が美容に与える影響について、具体的にふれていきたいと思います。
睡眠によるインナーケア
5月に入り、紫外線量が急激に上昇し、日傘をさして歩く男女も多く見られるようになってきましたが、「美」を支える睡眠の質向上を考えると日光とも上手に付き合う必要がありそうです。
日常生活の中で安定的に美容効果を高めるためには、外からのケアの代表である化粧品が注目を浴びがちですが、実際は身体の中からの「インナーケア」が重要な鍵を握ります。
つまり日々の質の高い睡眠、バランスの良い食事、適度な運動は、身体の内側から真の健康や美しさを向上してくれ、健康のバロメーターでもあるお肌の調子を改善してくれるのです。
中でも絶大な効果を発揮してくれるのが7時間前後の睡眠の間に分泌されるホルモンや神経伝達物質の働きで、その睡眠の質を向上するためには寝室環境も大きな影響力を持つのです。美しく健康な肌は夜の睡眠の間につくられるのですから。
また、睡眠による美容効果を最大限受け取るために、適度な日光浴も必要です。紫外線を完全にシャットアウトしてしまうことで、夜間の寝つきや熟睡感にマイナスの影響が出てしまうことも。これはなぜか、睡眠の美容効果を具体的にみていきましょう。
睡眠の美容効果
睡眠中に分泌される「成長ホルモン」や「メラトニン」は美容効果が絶大です。また睡眠物質と言われるメラトニンの原料となる「セロトニン」は心を穏やかに美しくし、睡眠をより良いものにしてくれます。具体的には次の通りです。
成長ホルモン
睡眠前半の深い眠りで分泌され、新陳代謝を促し、お肌のダメージを修復します(肌荒れ・シミ・しわ等の予防、修復)。お肌にとっては、天然の美容液とも称されています。
メラトニン
抗酸化作用、老化防止(アンチエージング)効果、がん抑制効果、生体リズム調整効果などがあり、免疫力を高めてくれます。暗く静かな環境で質の良い睡眠をとると分泌されます。
セロトニン
別名「幸せホルモン」の一つで、40代、50代から乱れがちで減少しがちな女性ホルモンの分泌を促し、バランスを整えて、心が安定になり、美容効果も期待できます。
セロトニンは太陽の光や適度な運動によっても増加しますし、トリプトファンを含む食事(だいず製品、卵、ナッツ類、ご飯、バナナなど)によっても増えます。
このセロトニンが夜には眠りを誘発するメラトニンに変化するので、日中の活発な活動と質の高い夜の睡眠は相互に関連し、生活のメリハリは大きな美容効果をもたらします。
紫外線を嫌うばかりではなく、適度な日光浴もビタミンD生成、骨や筋肉を強化したり、生活習慣病やうつ病、認知症の予防に重要です。
寝室環境の美容効果
睡眠を充実させる外部環境の3大要因が「温湿度」「明るさ」「騒音」です。
寝室環境を整えて睡眠を充実させることは、美容にとっても大きな効果を期待できます。
暗く、静かな環境を整えることは、他の要素に比べると比較的取り組みやすいと思います。
特に日本国内で苦慮するのが温湿度です。これから暑くなる夏季では室温を26℃以下に、冬季では18℃以上にすることが睡眠の質向上につながり、湿度は年間を通して50±5%が望ましいことが分っていますが、快適な温湿度環境を保つのは至難の業だと思います。
エアコンなどを上手に使用したいのですが、美容のためには乾燥を助長しがちな気流は直接顔に当たらないように上手にコントロールしましょう。
さらに心地よい寝具やナイトウエア―の選択で調節して「眠れる夜から生まれる美容効果」を確保したいものです。
眠らないのはもったいない
以上のように、美容のためには良質な睡眠が確保できることが先決であり、化粧品やサプリメント、お薬に頼るのは、次の手段になってきます。毎回お話しているように、睡眠を大切にして頂くと、美容だけでなく、様々な生活習慣病を予防し、ダイエットにも繋がり、心身の健康を維持・回復できます。
まだまだ「睡眠時間がもったいない」という方も多いのですが、実は睡眠は費用のかからない美容・健康法なので、「眠らないことがもったいない」と言えるのです。
最新の健康科学を理解すると、美しさを追求する人も、トップアスリートも、人生にチャレンジし、セルフマネージメントできる老若男女も、うまく睡眠と生活をコントロールしている方々が多いことが分ります。
睡眠で身体の内側から、寝室環境・寝具を整えて外側から、両面から美容・健康効果を向上しましょう。
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アンケートご協力のお願い
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