【快眠コラム】子どもの睡眠と発達障害
2024年4月29日
神川 康子
子どものための日本眠育推進協議会
子どもの心身の発達には睡眠・覚醒リズムに代表される「体内時計の形成」が重要であるということをより多くの方々に知って頂くために、日本眠育推進協議会という組織が2017年に発足しました。
構成員は小児科医、精神科医、保育や学校現場の教育者、健康関連の企業の方々など多岐にわたっています。
私自身も、当初からご縁があって10人の理事の末席を務めさせて頂き、眠育サポーター養成講座の講師も担当させて頂いています。
この新しい組織に参加させて頂いて、研修会やシンポジウムで知る最新の知見には、これまで自分が関わってきた研究領域からは想像もつかなかった事実を突きつけられて驚くこともしばしばです。
子どもも大人も睡眠は大事
当時、同志社大学の赤ちゃん学研究センター長だった(故)小西行郎先生の講演を聴いた時は目から鱗でした。
妊娠中のお母さんの睡眠も守っていかなければ、胎児の脳にも炎症が起こりやすくなると。
もちろん出生後も眠りを大切にしたり、日中の戸外活動や日光浴をしたりすることも大切だと。
現代は日光を目の敵にしてUVカット、UVカットと日傘や黒い装束で歩いたり、赤ちゃんのバギーもフードをかぶせて押したりしているのは心配になると仰っていました。
表現はちょっと違うかもしれませんが、ほんとうに衝撃でした。
私が睡眠学の講義や講演でお話していることが妊婦さんや胎児にも同様の事が言えることに驚いたのでした。
そして大学院生の時(1970年代)に関西の高校で非常勤講師として「出世前育児学」で「健やかな子の親になるためには、まず自分の身体を大切にする事から」と荒れていた高校生に講義していたのは大正解だったんだと、確信しました。
睡眠と子どもの成長発達の関係性
睡眠と子どもの成長発達には密接な関連があることは折に触れてお伝えしていますが、実は発達障害のASD(自閉症スペクトラム)は基本的に出生時には決まっているというのが現在の定説のようです。
その特徴的な様子が見えてくるのは1歳過ぎが多いので、育て方の問題ではないかという保護者の罪の意識は当たらないようです。
発達障害と言われるASDやADHD(注意欠陥・多動症)にはプラス面の特徴も知られており、好きな事を追求し没頭するので研究者や技術者には割と多いと言われてもいます。
故スティーブ・ジョブス氏なども典型例だそうで、実業界で成功をおさめる人にも多いようです。
3段階の環境要因
このような発達障害になる過程には、遺伝的素因に加えて、大きく3段階の環境要因があることが知られています。
出生前には親の栄養障害、睡眠障害、ストレス、喫煙、日光拒否などによる胎児の脳内炎症が神経細胞や脳の発達に影響を及ぼし、生体機能のリズムや大脳皮質の機能に障害を引き起こすそうです。
第二段階として、出生後の授乳状況や日光浴の不足、ゲームや親の生活リズムの乱れが、社会性や言語・創造力の障害となって現れます。
第三段階は、社会環境としての情報の高度化や、子ども自身の多忙化、スマホ・インターネット中毒やいじめ等の問題によって、精神的な疾患やうつ症状、認知機能の低下や不登校などにも表れてくるようです。
今日から生活の質を改善してみよう
少々深刻で、難しい話になりましたが、改めて大人の生活が子どもの成長発達に影響することを知りました。
家庭でも学校でも地域でも、胎児・赤ちゃんから大人まで、日々の生活、とくに睡眠・生活リズムを大切にして、脳の健康を維持するために、時々原点回帰し、睡眠、食事、運動、ストレス解消、コミュニケーション、互いの思いやりを大切にしたいものだと思います。
いつも言っている事なのですが、気付いた時からスタートで、生活の質は今日より明日、改善できます。
手遅れは無いと思って、家庭や学校、地域で科学的情報を共有することで、子どもの健やかな成長を促してくれるのです。
アンケートご協力のお願い
本記事の著者であり、エムールの睡眠・生活研究所の所長でもある神川康子から、アンケートのご協力のお願いです。
できるだけ多くの方々から広くデータを集め、睡眠の質を高めるための生活習慣の取り組みをどのくらいなされているのかを調査しています。
3分程度で完了する簡単なアンケートになっており、結果はこちらのメディアでも開示予定です。
よろしければご協力をお願いいたします。
.