【快眠コラム】梅雨と快適な睡眠

2023年5月25日

神川 康子

連想ゲームで頭スッキリ、不快を快に!


「梅雨」という言葉からイメージするものは何でしょうか。連想する言葉を10個、思い浮かべてください。
連想ゲームは、鬱陶しいお天気で気分がすぐれない時や、眠いなぁという時の脳の活性化に繋がります。

大学の講義でウォーミングアップに時々実施していました。語彙力が低下してきた高齢者の頭の体操にもなります。

そして自分にとって何が快適で、何が不快であるのかを考え、不快感を改善する対策を考えることに繋がります。

セルフマネジメントの基礎は多様な自然・生活体験から

話は少し反れますが、大学の生活環境学に関する講義で、学生達に「騒音対策」を考えさせる際に「好きな音」「嫌いな音」をイメージしてもらったところ、「交通騒音」「隣家の話し声」「工事中の音」「家電製品の音」「雷」「暴風雨」など、不快な音はすぐに出てくるのに、意外にも「好きな音」は出てきません。

「五月雨の音」「木の葉のささやき」「小鳥のさえずり」「波の音」といった音は日常的にあまり意識したことが無いようでした。
受験勉強一筋だったのか、大学入学までの自然体験、生活体験の少なさがとても気になりました。

喜怒哀楽の感情を伴う自然・生活体験は、脳の神経伝達活性化と脳の成長発達、精神の安定に繋がり、セルフマネジメントが必要な大学生活を豊かに安定させるので、大学生の間に様々な体験活動を増やすように勧めました。

デジタルが普及した便利な現代だからこそ、健康維持のためのセルフマネジメント力を高めるため、意図的に日々の実体験を増やしていきたいものです。

「梅雨」から連想すること

さて、「梅雨」から連想することは10個、思い浮かびましたか?

老若男女、立場によっても浮かぶイメージは違いそうですね。
子どもなら「新しい傘」「長ぐつ」「水たまり」「カタツムリ」と、楽しそうな言葉が浮かびそうです。
それを聞いた祖父母世代は「あめあめふれふれ母さんが・・・」とか「でんでんむしむしカタツムリ・・・」などの童謡が浮かんできます。

しかし、日々暮らしに追われる大人になると何故か「洗濯物が乾かない」「布団が干せない」「自転車で出勤できない」などと、現実的な困りごとや「湿気」「カビ」「食中毒」「憂鬱」「梅雨前線」、最近では「線状降水帯」なども浮かんできて、気持ちが沈みがちです。

こんなときは、あえて良い連想を探すと前向きになれそうです。
「紫陽花」「花菖蒲」「雨だれ」「肌のうるおい」「6月の花嫁、ジューンブライド」「雨降って地固まる」など。
寝室環境やリビングなどの生活空間の中に、紫陽花や菖蒲の切り花を飾り、雨音をBGMにゆっくり読書をするのも良さそうです。

梅雨こそ家族や仲間の快適、安全を考えるチャンス

このように沈みがちだったり、不快に感じたりする梅雨時こそ、快適な暮しや安全な暮しの備えを考えるチャンスと切り替えてはいかがでしょう。

特に室内環境では湿気対策が重要になってきます。私たちの快適性を左右するのは温度、湿度、気流、そして輻射熱の4つの要素です。しかも感じ方は年齢や体調等によっても異なっています。
赤ちゃんや幼児では不快感を言葉では表せないので、大人が観察して水分補給や環境を整える必要があります。

また高齢になるにつれて温湿度感覚が弱くなりやすいので、やはり周囲の人が、着衣やエアコンなどで環境の調整を図ることが重要です。
同様に持病等のある方々にも配慮が必要です。

近年では室内や就寝中でも脱水が進み、熱中症にかかるような環境温度の変化(地球温暖化)が気になるところですが、五感を澄まして、家族や仲間、職場の同僚間等でも「快適」を確認、理解し合いましょう。

お互いの快適性を模索し、心地よく眠って、心と身体の元気回復

暑い時、じめじめする時はエアコンをうまく使って、室温は27℃前後、湿度調節も除湿機能を使い、梅雨時でも60%以下にしたいものです。

扇風機やサーキュレーターなどで気流を作り、目に見えない輻射熱対策としてもカーテンやブラインド、簾などで室内の壁や窓等からの放熱や蓄熱を調節できると良いでしょう。
その際には素材や色も重要です。衣服のように人それぞれ好きな素材や色はあると思いますが、室内は壁・床・天井の色や素材、それを補うものとしてのカーテン、ブラインド、家具の色さえも快適感に影響するので、季節毎の衣替えのように、カーテンやカーペットなどを工夫するのも楽しいものです。

睡眠中の寝具の中も部屋と同様です。
睡眠中は、全ての感覚が鈍って、何も覚えていないと思われがちですが、実は睡眠中にも五感センサーは働いており、蒸し暑いと頻繁に寝返りを行って空気を入れ替え、寝具内の温度や湿度を調節しようとしますし、寒い時には布団をかぶって温まった空気を逃がさないようにと寝姿勢の静止時間が長くなります。
これに加えて、寝室の明るさや騒音、さらに臭いなどがあればもっと眠りが浅くなります。これは、睡眠中にも(例えば火事などから)命を守る防衛反応なのです。

布団を干すことと睡眠の関連

以前、NHKの科学番組で、きちんと干した布団と、万年床で湿った布団で眠りは変わるのかという実験依頼をうけて試したことがありましたが、その結果は歴然としており、日光で干した布団では、睡眠中の中途覚醒がほとんどなく、1か月干していない湿った布団では、中途覚醒が多く、明らかに睡眠の質が低下していました。

梅雨時は布団が干せないことも多いのですが、布団や寝具の素材(吸湿性、透湿性、通気性等々)を工夫し、週に1回程度、布団乾燥機で干すだけでも眠りが改善し、心と身体が元気になります。
室内環境も寝具と同様です。梅雨時こそ自分の快適空間や寝具を探って、心地よさを見つけてください。

大学に着任した30年以上前の事ですが、せんべい布団を万年床にしていて、卒業時にアパートを引き払うために布団を上げたら畳にキノコが生えていたという学生の話がどうしても忘れられません。
ここまで極端なケースは少ないとは思いますが、高温多湿の日本では、睡眠環境の温湿度には特に気を配る必要があります。

梅雨の季節こそ、寝室環境や過ごし方を見直す良い機会です。心身ともに快適な環境、過ごし方を目指していきましょう。

執筆者/監修
Author

神川 康子

富山大学 名誉教授 博士(学術) 。一般社団法人日本睡眠改善協議会理事。日本眠育協議会理事。富山県公安委員会委員。富山県社会福祉協議会理事。40年以上に渡り、睡眠研究を行う。年間50回を超える講演を通して、睡眠教育の啓発に尽力。睡眠環境学入門ほか寄稿多数。