専門家に聞く”睡眠中、なぜ夢を見るの?”【快眠コラム】

2024年9月27日

神川 康子

悪夢を見るのは大丈夫?正夢は本当にあるの?

エムール睡眠・生活研究所の所長で富山大学名誉教授の神川と申します。

小学校に講演に行って、質問タイムによく出る質問が「夢」についてです。「悪夢をよく見るのですが大丈夫ですか?」「正夢って本当にありますか?」「夢の中で死んだりしたらよくないことが起こりますか?」「夢占いって当たりますか?」など。子ども達の夢への関心はとっても大きいことが良くわかります。

きっと大人になっても同じだと思います。大学で睡眠学を講義していた時も夢についての講義には、普段以上に学生の食いつきが良い気がしました。

夢に関して寄せられる多くの質問

  • 悪夢をよく見るが大丈夫か
  • 正夢は本当にあるか
  • 夢の中で死んだりしたらよくないことが起こるか
  • 夢占いは当たるか
  • 毎日夢を見ると睡眠不足なのか
  • 夢を全く見ないのはおかしなことか

夢に関する科学的研究

夢はロマンなので、あまり夢を破ってはいけないのですが、科学的な研究の歴史を振り返ってみましょう。
1963年に睡眠中の急速眼球運動(Rapid Eye Movements=REMレム)が発見されてからは、占いや文学、時には政治的な判断にまで使われてきた夢見が科学的に解説できるようになってきました。一方で、「睡眠研究」自体がまだまだ歴史は浅く、その中でも夢の研究はまだ分からない事も多いので、ぜひ夢の研究者が増えてほしいと願うところです。

夢を見ていても忘れてしまう?

レム睡眠中に夢を見ることはよく知られています。しかし、ノンレム睡眠中にも実は夢を見ています。ただ、特徴が異なります。

レム睡眠中の夢の特徴

  • 実際に現実に起きているように生々しい
  • 喜怒哀楽などの感情を伴う
  • 金縛りが起こることも
  • 込み入ったストーリー性がある
  • 朝起きた際に内容を思い出せる

ノンレム睡眠中の夢の特徴

  • 断片的で思考的
  • ぼんやりとした考えやなんとなく聞こえる声や音
  • 曖昧なイメージ
  • 内容が切れ切れ
  • はっきり思い出せないことが多い

夢を見ないという方の中にも、ノンレム睡眠中に夢を見ていて、朝そのことを忘れてしまっているという方もいらっしゃるかもしれませんね。ちなみに、金縛りをレム睡眠中の夢の特徴と照らし合わせて考えてみると説明ができます。現実的で生々しいある夢見+身体は動かせない(レム睡眠中は休息のため全身の筋肉が脱力しています)=恐怖体験を伴った金縛りとなります。

夢の役割とは?

夢の役割としてはREM睡眠発見時からいくつかの説があり、①本能説(フロイトなど)、②行動の模擬演習説(ジュベーなど)、③忘却説(クリックなど)、④記憶の再生・再処理説(ユングなど)というように様々な説があり、私たちの日々の夢を思い返すと、どれも当てはまるような気がすることは皆様にもあると思います。

フロイトやフィッシャーは夢を無意識な欲求の現れとし、ジュベーは夢が日々の行動のシミュレーションとなり行動プログラムを作成しているとし、クリックなどは不要な記憶を消去して脳の容量を増やしているとし、ユングは蓄積した記憶データをもとに明日や未来の事を予測しているとしています。

私もドクター論文を指導して下さった先生がジュベーに師事したと伺っていたので興味があり、一定期間夢日記を記録していたことがありますが、行ってみたい所へ旅をする夢や、交通事故を起こす夢を見て、気を付けて運転しようと思ったり、できなかったスキー技術を夢の中で克服して本当にできたりしました。また、夢の中で卒業設計のヒントを得て一気に書き上げたこともありました。

ところが、大学教員になってから良く見た悪夢が、「授業で当てられて答えられず、ずっと廊下に立たされる夢」だったので、ストレスが悪夢に繋がることを実感しました。それ以来、授業では学生達に恐怖感ではなく、学ぶ楽しさを感じてもらいたいと努力してきたつもりです。

素敵な夢を見るには?

今でも、子ども達には、睡眠中に夢を見ることはとても大切で、悪夢でも現実に起こらないように気を付けるための警告であり、殺人などの夢は自分が生まれ変わりたいというリセットしたい気持ちの表れや、人の命を大切にしようという再確認だったりするので、心配しなくて良いと伝えます。

就寝前はできるだけ不安やストレスを和らげてリラックスし、恐怖を感じるドラマや本、絵本は避けて、心が安定し、心地良くなる方法を見つけることなどをアドバイスします。
特に毎日不規則でバラバラな時間帯に睡眠をとると、夢の一種である「金縛り」が起こりやすくなり、怖くて体が動かない、声が出ない、逃げられず、大きな力で抑え込まれるような超常現象と勘違いするような体験をすることになると伝えます。

毎日規則正しく、発達段階にあった、たっぷりの睡眠をとれば、素敵な夢を見やすくなり、夢が色々な事に気付かせてくれて、何よりも朝方に脳の温度が上がって起きやすくなり、記憶力も向上して、認知機能も向上すると言えます。
夢はとても大切な睡眠で、しっかり筋肉が休み充電するためにも必要不可欠な眠りであることをぜひ知ってください。

一昔前のタレントさんで「いい夢みろよ!」と去っていく人がいましたが、私も講演のおわりは「皆さん眠りでも人生でもいい夢見ましょう!」と締めくくっています。

今日から実践できる睡眠改善方法

素敵な夢を見たい!という方は、ぜひ下記のURLから「睡眠を改善する生活習慣15項目」に答えてみて参考にしてください。
昨年までの睡眠研究で、この15項目から3つを選んで2週間チャレンジして下さると、61%の方で睡眠が改善したという結果になりました。残りの39%に入りそうな方はもうあと2項目を加えてみて下さい。

 

睡眠の質を改善するための生活習慣改善の取り組みアンケート

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家族や職場で睡眠を改善したい方のために「すいみん・かるた」(dreams come true=良い眠りは人生の夢を実現する)を作成しています。

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ぜひ参考にして、習慣や環境を整え、習慣や環境を整えて、日々の睡眠を大切にしていってください。

執筆者/監修
Author

神川 康子

富山大学 名誉教授 博士(学術) 。一般社団法人日本睡眠改善協議会理事。日本眠育協議会理事。富山県公安委員会委員。富山県社会福祉協議会理事。40年以上に渡り、睡眠研究を行う。年間50回を超える講演を通して、睡眠教育の啓発に尽力。睡眠環境学入門ほか寄稿多数。